わたいりカウンター

わたいしの時もある

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

川舟ののぼりわづらふつなでなはくるしくてのみよをわたるかな(新古今/雑下/難波頼輔/1773) アメリカ大陸を横断して荷物を運ぶゲームをやっていたとき、最も重宝した道具はロープ用パイルでした。縄付きの杭の事です。崖や下り坂など、身ひとつでは危険を…

昔作った

今作る斑の衣面影に我に思ほゆ未だ着ねども(万葉/巻七/譬喩歌/衣に寄す/1296) 歌を訳すなら「今作る斑の衣面影に」いま作る斑の衣が(あの人の)面影を「我に思ほゆ未だ着ねども」私に思わせる、まだ着ていないのに、という感じでしょうか*1。上代に使われ…

正反対の空

大空はくもらざりけり神無月時雨ごこちは我のみぞする(拾遺/恋一/よみ人知らず/651) ゲリラ豪雨の中を自転車で帰らないといけなくなったことが何度かあります。 歌は、晴れ渡る大空と自分の悲しさを対照的に描き出しています。訳すなら「大空はくもらざり…

浮揚

冬はいかにむすべる滝のいとなれや 今日ふく風に解くる音する (重之集/223) 毎日、こうして歌を読んで、こころが動いていくのを文字にして、一体どのような意味があるでしょうか。 歌は、滝の水流を糸にたとえる、その典型表現を、冬から春になる季節に即…

ごめんなさい

音に聞くつつみの滝をうち見れば ただ山川のなるにぞありける (重之集/173) 私は大学を卒業して宙ぶらりんの状態になった後、某社の契約社員になってのち現在は無職である。来年にはまたフリーターのような形で仕事を求め生きていくつもりである。誰かに聞い…

なほあたらしく

春雨の世にふりにたる心にも猶あたらしく花をこそ思へ(後撰/春中/題しらず/よみ人も/74) 週刊少年ジャンプを毎週読んでるでいるのですが、電子版にしてから特に、全部は読まずに気になる作品だけを読んで満足するようになってしまいました。タイトルも作者…

そういうとこだよ

雲のうへにさばかりさしし日かげにも君がつららはとけずなりにき(後拾遺/恋一/五節に出でてかいつくろいなどし侍りける女につかはしける/中納言公成/622) 自分にないものに惹かれる。それ自体は自然な心の動きだと思います。けれど、関わっていく中で双方…

たのしい夜

ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな明けむ朝に消なば惜しけむ(万葉/巻八/冬の雑歌/小治田東麻呂/1646) 「明けない夜はない」というフレーズがなんとなく苦手でした。理由を言い尽くすのは難しいですが、自分が後ろ向きな性格だというのもありますし、「夜の来…

羽にあたる風を思うとき

和田の原八重の鹽路にとぶ雁の翅の波に秋風ぞふく(金槐/秋/海上雁/235) 金槐和歌集は源実朝の歌を集めたものです。 実朝はどうして海の原(わたのはら)を「和田の原」と書いたのか、わからないですが、たくさん言いたいことがあるような気がしますが、そ…

明日も会いたい

一昨日も昨日も今日も見つれども明日さへ見まく 欲しき君かも(万葉/巻六/雑歌/(上略)門部王の家に集ひて宴する歌二首/橘文成/1014) 小学生の頃、毎週友達とジャンプの話をするのが楽しみでした。よく遅刻してきて先生から「社長」と呼ばれていたやつが隣の…

コミニケーション不得手

おほ空をながめぞくらす吹く風の 音はすれども目にし見えねば みつね(拾遺/雑上/450) 今日はひとり飲みに行ったら数年ぶりにあう友人とたまたま居合わせて、小銭を持ちたくないという理由で450円おごってもらうことになりました。 歌は「おほ空をながめぞ…

聞こえる音に思うこと

静けくも岸には波は寄せけるかこれの屋通し聞きつつ居れば(万葉/巻七/雑/羈旅にして作る歌九十首/1237) 夏休みなんかは、よく図書館に行って新聞を読んだり本を読んだりしていました。夏の朝、図書館はほどほどに冷房が効いていて静かです。向かいのテーブ…

たのしい規模

をしなべて峰も平らになりななん山の端なくは月も隠れじかむつけのみねお(後撰/雑三/1249)「5000兆円 欲しい! *1」というフレーズを耳に、いや、目にしたことはあるでしょうか。まるで新装開店するパチンコ屋のチラシに使われそうな、あけすけな光沢感の…

永久の心理なのかしらね

あきのたのほのうへをてらすいなづまの光のまにも我やわするゝ(古今/恋一/547) 証明写真の撮影が苦手です。というのも、まずわかっていてもフラッシュに目を瞑ってしまう。そして頑張って目を開こうとして、でも眉間に皺は寄っちゃいけないし、口元は自然…

まだあたらしかったころ

しろぬひ 筑紫の綿は身につけて未だは着ねど暖けく見ゆ(万葉/巻四/沙弥満誓/綿を詠む一首/336) 最近ちくちくしないセーターの広告を見ます。私は肌がそんなに強くないので、袖の長い肌着なしにセーターを着たことはなく、ちょっと気になっています。そうい…

淀のとなりは

明日香川七瀬の淀に住む鳥も心あれこそ波立てざらめ(万葉/巻七/雑歌/鳥に寄す/1366) 今日は手遊びに坂本九の「明日があるさ」を弾いてたのですが、歌詞があんまり奥手な男子の恋模様で古傷が開きました。そしてそういう(私みたいな)やつは理屈に逃げるもの…

友達んちから帰るとき

ひさかたの天の露霜おきにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ(万葉/巻四/相聞/大伴坂上郎女/651) 私が住んでいた地域では、夕方の決められた時間に児童の帰宅を促す放送が流れました。子供の頃はもっと遊んでいたくて鬱陶しかったですが、歳を重ねるにつれてい…

キザなのか優しさなのか

衣手の別る今夜ゆ妹も我もいたく恋ひむな逢ふよしをなみ(万葉/巻四/相聞/三方沙弥/508) 歌を訳すなら「衣手の別る今夜(こよい)ゆ妹も我(あれ)も」袖が離れた今夜からはあなたも私も「いたく恋ひむな*1逢ふよしをなみ」とても恋しく思うだろうね。逢う方法…

気になり出した君に

山深み我が身入りていにし月思ひ出づるは涙なりけり(重之集/167) 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」なら物語が始まるところですが、深い山に入って月が見えなくなるこの歌はラストシーンのような気配があります。また核となる感情もさること…

死んだ変数で繰り返す

はるやくるはなやさくともしらざりきたにのそこなるむもれ木の身は(新勅撰/雑二/和泉式部/1200) そういえばこの間、回転寿司に行ったんですよ。ひとりで。おそるおそるカウンター席に座ると、となりのおっちゃんが長電話しててほんのり嫌な気持ちになった…

1200年以上前に既出

ちはやぶる神の社しなかりせば春日の野辺に粟蒔かましを(万葉/巻三/譬喩/娘子、佐伯宿禰赤麻呂の贈る歌に報ふる一首/404) ああ!それ私もやろうとしてたのに!と思わず立ち上がりそうになったけれど、読めば読むほどいいなあと思ったので今日はこの歌です…

交差点は足跡だらけで

大き海の水底とよみ立つ波の 寄せると思へる磯のさやけさ(万葉集/巻七/雑歌/羈旅にして作る歌九十首/1201) 今日は短歌研究をめくっていたのですが、年の近い人や自分より若い人も歌を載せていて、それがまた「いいな」と思わされちゃったりして心がざわざ…

ちょっと皮肉な

あふ坂の嵐の風に散る花をしばしとどむる關守ぞなき(金槐和歌集/春/67) 今日は雨でずっと家にいました。今も外から雨の音がします。 花が散ってしまうのを惜しむ歌、ではあるのですが下の句が異質で超捗りました。 まず「しばしとどむる」ここまで読んだ時…

一面からじゃ

降る雪の袖にこほりしあしたより振り捨て難きものをこそ思へ (重之集/162) 最近は自分で歌を作るようになった。今日はそれを初めて歌会に持ち込んだ。評価してくれる人もいて嬉しかったが、一刀両断されたい自分もいた。その欲求は後で無事成就して、どう…

鼓動は証

もみぢ葉の色をし添へて流るれば浅くも思えず山河の水よみ人知らず(拾遺/秋/194) 今でこそ、褒められた時*1は努めてその言葉を受け取るようになったのですが、少し前までは「いやいや私なんか」みたいな対応しかできませんでした。 この歌の技巧的に面白い…

融けていくのを待つ

み山木を朝な夕なに樵りつめて 寒さを乞うる小野の炭焼き曾禰好忠(拾遺/雑秋/1144) 今日は一段と寒かったですね。メンタルもつられて弱っていたのか、個人的な信条と正反対のなじりを受けてひどく悲しい気持ちになりました。 歌を訳すなら、朝晩に木を切っ…

命令の裏に

真澄鏡かけて偲へと まつり出す形見の物を人に示すな(万葉/巻十五/中臣宅守/3765) 胸焼けするくらい情念のこもった歌だと思ったら、流罪になった宅守が別れ際恋人に送った歌のうちの一首でした。 「真澄鏡(まそかがみ)かけて偲(しの)べと」とは(あなたから…

はるかぜとともに

花咲かぬ我が宿さへもにほひけるとなりの梅を風や訪ふらむ(重之集/105) 住んでる地域でお祭りなんかがあると、なんとなくウキウキしてしまいます。別に前のめりで楽しみに行くタイプじゃあないのですが、自分の部屋で遠くから聞こえる太鼓の音を聞いては、…

用意された心

風寒み春や来たらぬと思ふ間に山の桜を雪かとぞ見る(重之集/80) この間ハイキューという漫画の公式ガイドブック*1を読んでいたら、作中のフレーズが細菌学者パスツールのスピーチの言葉だったと知りました。調べるとウィキペディアにも「幸運は用意された…

水茎の跡

水茎の跡ふみつけて試みむ思ふところに歩みつくやと (重之集/64) 初読で感じた感情は哀愁でした。重之は相模やら陸奥やら地方へ行き仕事をしていた。要は出張の多い人物だったのですね。そんな重之が水草の茎を「ふみ」踏みしめて、思ったところに足跡を残…