わたいりカウンター

わたいしの時もある

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

四十音始終(三)

明るさは言い淀まない うぐいすの永遠に鳴くおく山怖し神さまは君の近くで朽ちちゃうし敬虔だった子らも泣いてるし淋しくてしょうがない 鼻をすすってさ洗濯機まわすそれしかない立ち食いの中華そば屋でつけ麺ができるのを待つ 時計の針となれた足取りで人間…

夕焼け浦山

縄の浦に塩焼く火のけ夕されば 行き過ぎかねて山にたなびく (万葉/巻三/354/日置小老) 家の外から、人が笑ったりしゃべったりする声が聞こえると、ちょっと身構えてしまう*1。別に何か悪いことをしているというわけでもないし、なんかくやしい。 歌は「縄…

書けと導く埠を過ぎて

港出づる海人の小舟のいかり縄 くるしき物を恋と知りぬる (拾遺/恋一/638/よみ人知らず) しばらく文章を書かないと、書くこと自体が億劫になってしまう。書かなかった理由はいくつかある気がしているけれど、たぶん一番大きいのは自分が停滞していることを…

袖が凍る前に

降る雪に濡れきて干さぬわが袖を こほりながらも明かしつるかな (重之集/289) ひさびさに銭湯に行って、自分の体温より5℃くらい高いお湯に浸かった。気づけば、実に半年ぶりの湯船だった。めんどくささが先行していつもシャワーで済ませていたのだ。外側から…

戻れない

月をおもふあきのなごりのゆふぐれに こかげふりはらふ山おろしのかぜ (新勅撰/冬/390/慈円) 今日は水族館に行った。親子連れが多くて、邪魔にならないようにいそいそと回ってしまっているときは楽しくなかったけれど、身長の3倍はあろうかという大きな水槽…

遥かな冬の海にて

わたのはらやそしましろくふるゆきの あまぎるなみにまがふつりふね (新勅撰/冬/426/正三位家隆) よく鶏むねを冷凍するのだが、最近、若干のつらさを感じている。調理のときは、電子レンジに半解凍をお願いしてから切るのだが、それでも抑える手が冷たくて仕…

四十音始終(二)

朝焼けの色はまだらに浮雲やエンジン音がおはようと言う書き初めの機運高まる 靴下は健康だからここに穴あくさみだれを知りたい人はすぐにでも世知辛くても外に出てみて太陽とチャンスがあれば付き合って手を繋ぐまで遠回りしたい習い事日曜日さえ盗んでく寝…

四十音始終(一)

淡いだろ 一番いいとうらやんでえ働けず 幼かったです隠しても気にならないの?くさいけど倹約を旨と 孤独で死ぬと砂漠までしじみを飲んで健やかに生活はつづく そんなことある?無料(タダ)よりも血が通ってるつみき積む手に浮く線は途絶えず伸びてよナン食…

ありがとうございます

読んだもの、観たもの、聴いたものなどを羅列する回というのをこれからちょこちょこやっていきたいと思います。綿入り、というふわふわした不定形のイメージと、What I read というちょっと簡素で構造的なイメージの間を行きつ戻りつ文章を書いていくつもり…

和歌じゃない短歌の紹介の仕方がわからない

恥知らずそれはペンギン羽撃(はばた)けど翼とならぬ歌の数々(『群黎 I』佐佐木幸綱「動物園抄」) たくさん本を読んでいるわけじゃないけれど、わたしなりにオールタイムベストを選ぶならその中に必ず『ペンギン・ハイウェイ』が入る人間なので(?)、上の句…

対決まほろば目に見えない

春霞はかなく立ちて別かるとも風より他に誰かとふべき(後撰/離別 羈旅/離別/よみ人知らず/1342) 中学時代、毎日のように朝昼卓球をしていた将棋部の友だちがいた。彼とは将棋盤を挟んでもアホほど対局したし、いま振り返ると、ちょっと気持ち悪いくらい一…

爆音乗詠

あまのはらふみとどろかしなる神も思ふなかをばさくるものかは(古今/恋四/701) 家の近くをよくバイクが通る。何も窓の外をじっと眺めている訳ではないが、わかる、というか否応なしに聞こえてくるのだ。そのエンジンの大きな音を聞くたびに、わたしは、ど…

時には明るくないほうが

白雲の来宿る峰の小松原枝繁けれや日の光見ぬ(後撰/雑三/時に遇はずして、身を恨みて籠り侍ける時/文屋康秀/1245) 明るい、と言われて真っ先に思い浮かぶ色は白だった。白は光そのものでもあり、光の気配でもあるらしい。 歌を訳すなら「白雲の来宿る峰の…

しをるもしをらないも

しをりせで猶山ふかく分けいらんうき事聞かぬ所ありやと(新古今/雑中/西行法師/1641) 歌を訳すなら「しをりせで猶山ふかく分けいらん」枝も折らないでさらに山の奥へ入っていこう「うき事聞かぬ所ありやと」いやなことを聞かないで済むところがあるかと思…

そのときは混沌

世と共に明石の浦の松原は浪をのみこそよると知るらめ(拾遺/雑上/源為憲/464) 今日はマジで何言ってるか分からない神っぽいな - ニコニコ動画を聴いて楽しい気持ちになっていた。語感が良くて非日常的なフレーズが細かく連続するここちよさ。「あばらの溝…

苦いと思っていた歌が実は甘いパターン

中々ひとりあらねばなど、女の言ひ侍ければ ひとりのみ年経けるにも劣らじを数ならぬ身のあるはあるかは(拾遺/雑恋/元輔/1250) 「もしあの時あの人と付き合っていたら」という想像は甘ったるいですが、冒頭のシチュエーションはなかなか苦々しい。というの…