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わたいしの時もある

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

人には人のときめきがある

春ごとに野辺のけしきの変わらぬはおなじ霞や立ちかへるらん(後拾遺/春/藤原隆経朝臣/12)*1 わりと祝い祝いしがちな立春の歌の中で、冒頭歌はすこし冷静に春を眺めていて気になった。結句「立ちかへるらん」の主語が「春」ならば、たしかに四季は巡るもの…

ラブコメの主人公みたいな

くまもなき月ばかりをや眺めまし散りくる花の影なかりせば(大納言經信集/33) 明るい月夜と落花を歌った春の歌で、今日は年内最後の満月ということもあってか気になってしまった。訳すなら「くまもなき月ばかりをや眺めまし」曇りのない月だけを眺めていた…

みっしりさびしい

まばらなる槇の板屋にをとはして洩らぬ時雨は木の葉なりけり(長秋詠草/52/冬歌十首) 冬の落葉を描いた藤原俊成の一首。「まばらなる槇の板屋にをとはして」まばらな槙の板が屋根の家に音がして「洩らぬ時雨は木の葉なりけり」(でも)洩れてこない時雨は木…

閑かな夜

ほととぎすをよめるまたねどももの思ふ人はをのづから山ほととぎす先ぞききつる(和泉式部集/夏/22) 歌は夏の風物詩ほととぎすの初音について歌っている。「またねどももの思ふ人はをのづから」待たなくても、思い悩んでいる人は自然と「山ほととぎす先(ま…

おいおい

春の野は雪のみつむと見しかどもおひ出るものは若菜なりけり(和泉式部集/春/3) 歌は春の訪れの気づきを歌っている。「春の野は雪のみつむと見しかども」春の野原は雪だけが積んでいると見たけれど「おひ出(いづ)るものは若菜なりけり」生え出ているのは若…