わたいりカウンター

わたいしの時もある

大事な   の心の時間かせぎ

片岡のこの向つ峰(を)に椎蒔かば今年の夏の陰にならむか(万葉/巻七/雑歌/岳(おか)を詠む/1099) 一読して、いやめっちゃ仲いいな?ってなったのですが、理由がよくわからないので考えてみたいです。 まず「片岡のこの向つ峰(を)に椎蒔かば」片岡のこの向こ…

愛される曖昧さは未だない日々

通るべく雨はな降りそ我妹子が形見の衣我下に着(け)り (万葉/巻七/雑歌/雨を詠む/1091) なんか気になる歌っていうのは、共感できるか自分にないものを持っているか、どっちかのような気がしています。今回もそのどちらかでした。 「通るべく雨はな降りそ我…

あたたかくてさびしくて

大き海に島もあらなくに海原のたゆたう波に立てる白雲 (万葉集/巻七/雑歌/雲を詠める/1089) そっけないような、のんびりとしているような、少しだけ寂しいような気配もあるふしぎな歌で、思わず読み返してしまった。詠者の感情がなかなか見えてこないうた…

でも三日月をブーメランにするなら鋭角は削ってほしい

常はさね思はぬものよこの月の過ぎ隠らまく惜しき夕(よひ)かも (万葉/巻七/雑歌/月を詠む/1069) どうもすみません、ご無沙汰しています。最近は最低限の食い扶持を確保したり、料理のレパートリーを増やしたりしていました*1。今年度につきましてはなんと…

減ったり増えたり

梅のかのふりをける雪にまがひせばたれかことごとわきておらまし(古今/冬/きのつらゆき/336) 最近は病み上がりなりに忙しく「このぐらい体力がないと困るんだったな」と、思い出したりできたのは良かったけれどちょっと疲れた。けれど多分今日で忙しさもひ…

区切り方を間違えないようにしたい

河風の涼しくもあるかうちよする浪とともにや秋はたつらん(古今/秋上/(前略)かものかはらにかはせうえうしける*1ともにまかりてよめる/つらゆき/170) 歌は風や川面に立つ波から、秋の訪れを感じている。「河風の涼しくもあるかうちよする」河風には涼しさ…

声を出す理由

五月雨のそらもとどろに郭公なにをうしとかよただなくらん(古今/夏/つらゆき/159) 最近ツイッターがギクシャクしている。人間関係がとかではなく、運営がこのまま続いていくのかあやしい雰囲気なのだ。今日なんか知り合いが不透明な理由でアカウントを凍結…

気づいた時が

常夏の花をし見ればうちはへて過ぐる月日の数も知られず(拾遺/雑夏/1079/貫之/(前略)元良の親王の四十賀し侍ける時の屏風に) 「そちらもお変わりないようで」なんて言葉を、かける機運ばかりが高まり続けている。最近ふと、年が明けてから知人と会う機会が…

オール明けの朝焼けの写真なんて絶対見返してもおもしろくないのに撮っちゃう人間だよわたしは

斎院の禊の垣下に殿上の人びとまかりて、あかつきに帰て、馬がもとにつかはしける 我のみは立もかへらぬ暁にわきても置ける袖の露哉(後撰/雑一/右衛門/1094) 誰かといっしょに歩いていて、ふと何かが気になって建物や景色の前に立ち止まるとき。置いてけぼ…

壁打ちボールからは壁の匂いがする

春くれば木がくれおほき夕月夜おぼつかなしも花かげにして(後撰/春中/62/題しらず/よみ人も) 訳すなら「春くれば木がくれおほき夕月夜」春になると木に隠れてしまうことが多い夕方の月は「おぼつかなしも花かげにして」(ただでさえ)よく見えないのに花の影…

あいさつくったく

いつのまに霞立覧春日野の雪だにとけぬ冬と見しまに(後撰/15/春上/よみ人しらず) 訳すなら「いつのまに霞立覧(たつらん)春日野の」いつの間に霞が立ったのだろうか、春日野の「雪だにとけぬ冬と見しまに」雪さえ解けない冬だと思って見ていた間に(春が来て…

人には人のときめきがある

春ごとに野辺のけしきの変わらぬはおなじ霞や立ちかへるらん(後拾遺/春/藤原隆経朝臣/12)*1 わりと祝い祝いしがちな立春の歌の中で、冒頭歌はすこし冷静に春を眺めていて気になった。結句「立ちかへるらん」の主語が「春」ならば、たしかに四季は巡るもの…

ラブコメの主人公みたいな

くまもなき月ばかりをや眺めまし散りくる花の影なかりせば(大納言經信集/33) 明るい月夜と落花を歌った春の歌で、今日は年内最後の満月ということもあってか気になってしまった。訳すなら「くまもなき月ばかりをや眺めまし」曇りのない月だけを眺めていた…

みっしりさびしい

まばらなる槇の板屋にをとはして洩らぬ時雨は木の葉なりけり(長秋詠草/52/冬歌十首) 冬の落葉を描いた藤原俊成の一首。「まばらなる槇の板屋にをとはして」まばらな槙の板が屋根の家に音がして「洩らぬ時雨は木の葉なりけり」(でも)洩れてこない時雨は木…

閑かな夜

ほととぎすをよめるまたねどももの思ふ人はをのづから山ほととぎす先ぞききつる(和泉式部集/夏/22) 歌は夏の風物詩ほととぎすの初音について歌っている。「またねどももの思ふ人はをのづから」待たなくても、思い悩んでいる人は自然と「山ほととぎす先(ま…

おいおい

春の野は雪のみつむと見しかどもおひ出るものは若菜なりけり(和泉式部集/春/3) 歌は春の訪れの気づきを歌っている。「春の野は雪のみつむと見しかども」春の野原は雪だけが積んでいると見たけれど「おひ出(いづ)るものは若菜なりけり」生え出ているのは若…

四十音始終(三)

明るさは言い淀まない うぐいすの永遠に鳴くおく山怖し神さまは君の近くで朽ちちゃうし敬虔だった子らも泣いてるし淋しくてしょうがない 鼻をすすってさ洗濯機まわすそれしかない立ち食いの中華そば屋でつけ麺ができるのを待つ 時計の針となれた足取りで人間…

夕焼け浦山

縄の浦に塩焼く火のけ夕されば 行き過ぎかねて山にたなびく (万葉/巻三/354/日置小老) 家の外から、人が笑ったりしゃべったりする声が聞こえると、ちょっと身構えてしまう*1。別に何か悪いことをしているというわけでもないし、なんかくやしい。 歌は「縄…

書けと導く埠を過ぎて

港出づる海人の小舟のいかり縄 くるしき物を恋と知りぬる (拾遺/恋一/638/よみ人知らず) しばらく文章を書かないと、書くこと自体が億劫になってしまう。書かなかった理由はいくつかある気がしているけれど、たぶん一番大きいのは自分が停滞していることを…

袖が凍る前に

降る雪に濡れきて干さぬわが袖を こほりながらも明かしつるかな (重之集/289) ひさびさに銭湯に行って、自分の体温より5℃くらい高いお湯に浸かった。気づけば、実に半年ぶりの湯船だった。めんどくささが先行していつもシャワーで済ませていたのだ。外側から…

戻れない

月をおもふあきのなごりのゆふぐれに こかげふりはらふ山おろしのかぜ (新勅撰/冬/390/慈円) 今日は水族館に行った。親子連れが多くて、邪魔にならないようにいそいそと回ってしまっているときは楽しくなかったけれど、身長の3倍はあろうかという大きな水槽…

遥かな冬の海にて

わたのはらやそしましろくふるゆきの あまぎるなみにまがふつりふね (新勅撰/冬/426/正三位家隆) よく鶏むねを冷凍するのだが、最近、若干のつらさを感じている。調理のときは、電子レンジに半解凍をお願いしてから切るのだが、それでも抑える手が冷たくて仕…

四十音始終(二)

朝焼けの色はまだらに浮雲やエンジン音がおはようと言う書き初めの機運高まる 靴下は健康だからここに穴あくさみだれを知りたい人はすぐにでも世知辛くても外に出てみて太陽とチャンスがあれば付き合って手を繋ぐまで遠回りしたい習い事日曜日さえ盗んでく寝…

四十音始終(一)

淡いだろ 一番いいとうらやんでえ働けず 幼かったです隠しても気にならないの?くさいけど倹約を旨と 孤独で死ぬと砂漠までしじみを飲んで健やかに生活はつづく そんなことある?無料(タダ)よりも血が通ってるつみき積む手に浮く線は途絶えず伸びてよナン食…

ありがとうございます

読んだもの、観たもの、聴いたものなどを羅列する回というのをこれからちょこちょこやっていきたいと思います。綿入り、というふわふわした不定形のイメージと、What I read というちょっと簡素で構造的なイメージの間を行きつ戻りつ文章を書いていくつもり…

和歌じゃない短歌の紹介の仕方がわからない

恥知らずそれはペンギン羽撃(はばた)けど翼とならぬ歌の数々(『群黎 I』佐佐木幸綱「動物園抄」) たくさん本を読んでいるわけじゃないけれど、わたしなりにオールタイムベストを選ぶならその中に必ず『ペンギン・ハイウェイ』が入る人間なので(?)、上の句…

対決まほろば目に見えない

春霞はかなく立ちて別かるとも風より他に誰かとふべき(後撰/離別 羈旅/離別/よみ人知らず/1342) 中学時代、毎日のように朝昼卓球をしていた将棋部の友だちがいた。彼とは将棋盤を挟んでもアホほど対局したし、いま振り返ると、ちょっと気持ち悪いくらい一…

爆音乗詠

あまのはらふみとどろかしなる神も思ふなかをばさくるものかは(古今/恋四/701) 家の近くをよくバイクが通る。何も窓の外をじっと眺めている訳ではないが、わかる、というか否応なしに聞こえてくるのだ。そのエンジンの大きな音を聞くたびに、わたしは、ど…

時には明るくないほうが

白雲の来宿る峰の小松原枝繁けれや日の光見ぬ(後撰/雑三/時に遇はずして、身を恨みて籠り侍ける時/文屋康秀/1245) 明るい、と言われて真っ先に思い浮かぶ色は白だった。白は光そのものでもあり、光の気配でもあるらしい。 歌を訳すなら「白雲の来宿る峰の…

しをるもしをらないも

しをりせで猶山ふかく分けいらんうき事聞かぬ所ありやと(新古今/雑中/西行法師/1641) 歌を訳すなら「しをりせで猶山ふかく分けいらん」枝も折らないでさらに山の奥へ入っていこう「うき事聞かぬ所ありやと」いやなことを聞かないで済むところがあるかと思…