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わたいしの時もある

『淡島百景』のこと

 紙パックの飲み物をビニール袋に入れたままストローをさして飲むことが、めちゃめちゃかっこいいことだと思っていた時期がある。中でもレモンティーが好きで1リットルパックをよく飲んでいた。けれど、それを続けて2本飲んで気分が悪くなったことがあってから、かえって飲めなくなってしまった。自業自得だろうか。過剰に自信があった頃の、苦い思い出である。

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 『淡島百景』という漫画が三巻まで出ている。全国から少女たちが舞台を目指し集まってくる、宝塚の養成所のようなところの話だ。各エピソード毎に、生徒だったりその周りの友達やら先生やら卒業生など、いろんな視点から語られ、時系列も一定ではない。タイトルは毎回人名で多くは「〇〇と〇〇」と二人の名前が並ぶが、たまに一人の回がある。
 第1話こそ養成所に新たに越してくる新入生の初々しい話だが、成功に向かって頑張る青春の話というよりも、頑張るということの裏にある、動機や、期待、憧れ、応援すること、嫉妬、諦めること、おおよそさわやかではない感情と向き合う話が多い。
 何かを続けていく人も、途中で別の道を選ぶ人も、そのどちらにも葛藤がある。この漫画は、それが葛藤になるまえの、心のほんの小さなささくれのようなゆらぎも、精算する機会を逃していつまでも気になり続けてしまうことまでも描いている。
 例えば、自らの好きを一生の事として向き合い研鑽してきたこと、それを諦めても人生が続くということ。それを複数の視点から描き出していく。
 演劇の内幕ものとしてだけでなく、自分の「好き」に向き合う人の機微に真摯に向き合っている漫画としても、もっとたくさんの人に読まれてほしいし、私自身、続刊を待ち焦がれている読者の一人だ。

 そうして『淡島百景』のことを言葉にしているうちに、ふと、レモンティー、また飲んでみようかなと思ったのだった。