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わたいしの時もある

サンダーに紹介したい歌

 

秋の月山邊さやかにてらせるは

 おつるもみぢの かずをみよとか

 (古今/秋下/289)

 今日は七月一日でしたね。七月と言えば秋! 旧暦では秋ということになっています。
 現実はまだまだ暑いですが、晩秋の切ない歌を見つけたのでちょっとお付き合いください。
 訳すなら「秋の月山邊さやかにてらせるは」秋の月が山のあたりを明るく照らしているのは「おつるもみぢの かずをみよとか」落ちていく黄葉の 枚数を数えろってこと?、という感じでしょうか*1
 月が綺麗でも、黄葉が散る様子、ひいては秋が終わってしまうことをまざまざと見せつけられてしまうのでは、喜んで良いやら悲しむべきなのやら心の置き所がむずかしいですね。
 もちろん、月が綺麗で黄葉が散っていく様子は滅多に見られる物ではないでしょう。詠者は悲しい振りをして、自慢していることも考えられます。けれど、良いことと悪いことが対照的すぎて自慢説は採りづらい気がします。月が綺麗で人知れず散るはずだった黄葉の様子が暴かれるのは、個人的には、夏、花火で照らされた空き巣がベランダを乗り越えるところを見てしまうくらいばつの悪いことのように思うのです*2
 それでも景色の美しさ、月の明るさは理屈の中から伝わってきます。「かずをみよとか」と落葉の枚数がわかるのは、昼間みたいにはっきりと照らされているからでしょう。
 こんなにも綺麗な月夜だからこそ、黄葉も散ってしまわず、もう少し秋に居させてほしいと詠者は思ったのかも知れません*3

 

*1:参考:「古今和歌集日本古典文学大系

*2:短歌にする前に通報した方が良い

*3:ここからは完全に余談なのですが、先日、サンダーという黄色いとげとげした羽を持つでんきタイプの鳥ポケモンが生きづらいのではないか、という話題を耳にしたばかりでした(りきいちファーム2 - YouTube)。その例として、好きなアイドルのライブに行ったときなんかは、明るい曲調ならいいが、バラードの時なんかは「なんであいつだけあんな明るい色なんだよ」と揶揄されそうというのがありまして。そのときは笑って聞いていたのですが、後から思うと切ないなと。そう思っていたところこの歌を見つけて、何も悪くないのに、ただ自然体で居ただけで、黄色く光っていたら周りから疎まれる月とサンダーが結構似てる気がしまして。本当にサンダーが生きづらいと思っているかどうかはわからないのですが、もしサンダーが生きづらそうにしていたら、この歌の紹介したいなと思っています。