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天の川浮津の波音騒くなり
 我が待つ君し舟出すらしも
 (万葉/巻八/秋の雑歌/1529)

 発売日を今か今かと待ち望んでいたゲームがある*1。期待する心がありあまって、発売前から公式サイトを毎日かかさず訪問するのがたのしみでした。
 歌を訳すなら「天の川浮津の波音騒くなり」天の川の浮津の波の音が騒がしくなっている「我が待つ君し舟出すらしも」私が恋焦がれるあなたが船を出発させたみたいだ、という感じでしょうか*2
 織姫彦星神話が下敷きになった歌で、想い人が船を漕ぎ出した気配を、波音に感じたことを伝えています。
 それにしても本当に波音で船出がわかるものでしょうか。一年に一度の逢瀬を楽しみにするあまり、些細なことに相手の影を見てしまっているだけでは? ……そう考えてみると、この歌の核は波音に気づいたことではなく、今までずっと思い続けてきた恋人と会えることが楽しみすぎることを、落ち着かない様子を通して伝えているところかもしれません。
 波音が恋人の船出によるものか否かは、実際のところそんなに問題ではないのでしょう。
 楽しみにしていたゲームの公式サイトの更新を毎日チェックした日々は、更新がない日の方が多かった。けれど、それによってゲームへの期待が削がれたなんてことはありません。むしろ同じトップページの画像が違って見えるくらいには、楽しみを募らせていました。
 

*1:少年ヤンガスと不思議のダンジョン」というゲームでした

*2:参考:「萬葉集 2」日本古典文学全集