わたいりカウンター

わたいしの時もある

一面からじゃ

降る雪の袖にこほりしあしたより
振り捨て難きものをこそ思へ

(重之集/162)

 最近は自分で歌を作るようになった。今日はそれを初めて歌会に持ち込んだ。評価してくれる人もいて嬉しかったが、一刀両断されたい自分もいた。その欲求は後で無事成就して、どういう歌を届けたいのか考えさせられた。
 ごく個人的で抽象的な試論だけれど、普遍的な図形の輪郭を描くようでいて、その頂点に点を打つのではなく、少しずれた、それでいてそこしかないような場所に点を打ちながら、個人の実感を昇華していく必要があるのかもしれないな、と思ったりした。
 また具体的には、雰囲気に甘えず、意図を明確に言葉に落とし込む必要があった。一刀両断されて痛感したのはそのあたりで、だからか冒頭歌が沁みた。
 歌を訳すなら、降ってる雪が袖で凍るような朝から、振り捨てられないものをよく考えとけ*1、という感じだろうか。上の句でさえ既に厳しい冬の景色だが、下の句はそれにもまして思考を研ぎ澄ませと鬼気迫るような気迫がある。私はもっと言葉を選らんで、それから読者に託すべきだった。
 あまさず研ぎきったつもりの歌が、実はまだまだ磨く余地があると知らされて、恥ずかしいし、歯ぁくいしばって「次だ次!」という気持ちがあります。わかっててもできないこともあるんだから、見てろよ重之!*2

*1:拙訳

*2:当然ですが、かなり恣意的な歌の解釈です。普通に考えると、冒頭歌は冬の別れの歌なのかなと思っています。重之集は一人で一旦読み終えてから注釈を探して照らし合わせる予定ですので、どうかご容赦ください。