わたいりカウンター

わたいしの時もある

たのしい規模

をしなべて峰も平らになりななん
山の端なくは月も隠れじ
かむつけのみねお(後撰/雑三/1249)

「5000兆円 欲しい! *1」というフレーズを耳に、いや、目にしたことはあるでしょうか。まるで新装開店するパチンコ屋のチラシに使われそうな、あけすけな光沢感のあるフォントとその途方もない金額に思わず笑ってしまう雰囲気があります。
 歌は、月夜に知り合いと集まっていた時に詠まれた歌らしいです。訳すなら「をしなべて峰も平らになりななん」全体的に峰とか平らになっちゃってほしい「山の端なくは月も隠れじ」山のシルエットがなかったら月も隠れないだろうし、という感じでしょうか*2。なりななんが不思議な響きでチャーミングです。完了の「な」と願望「なん」で構成されています。
 何より、身勝手な注文の規模が大きいのが「5000兆円 欲しい!」みたいな勢いがあって好きになっちゃいました。「峰も平らに なりななん」ですよ? 個人の一存で月を隠すレベルの山が平らになんかなる訳ないんだから。そういうところが本当にいい。些細なことでへこんだり悲しんだりというのが、どうでもよくなってくる明るさがある。
 この無茶な要望が叶った場面を想像するのも楽しいんですよ。もし本当に山がなくなったら、遮るものがなくて馬鹿みたいに明るい満月が夜を照らしてもたのしいし、新月だったら「全然明るくないじゃん!」とまたひとしきり文句を言って、今度は「地球もなくは月も隠れじ」とか言ってみんなで騒いで欲しいなと思いました。