わたいりカウンター

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孤独濃いほど

数ならぬ身をうぢ河の網代木に
多くの日をも過ぐしつる哉
(拾遺/恋三/よみ人知らず)

 「数ならぬ身をうぢ河の網代木に」人数にも数えられないとるにたらない我が身を宇治川網代木(魚を獲る罠)に「多くの日をも過ぐしつる哉」(かかる多くの氷魚(ひを)じゃないが)たくさんの月日を過ごしてしまったなあ*1

 氷魚とは鮎の稚魚のこと。水揚げは12−3月の間で釜揚げで食べたりするらしい*2。歌われる無情感を支える「多くの日を」と祝うべき大漁の景「多くの氷魚」が対照的で沁みた。

 ちょっと前にもう全くと言っていいほど人と会ってない時期があって、そういう時にかなり前にたまたま居酒屋で隣の席だった人と交換した連絡先から数年ぶりに連絡があった。……まあ暇だったしうれしかったので、茶をしばいたり、フットサルに誘われてアシストを記録したりしたのだけれど、その後で「どうしてもあってほしい人がいる」ということになり……あなたとしゃべってるのは結構楽しかったんだけどな。丁寧にお断りしてその後はもうなにもない。

 手段と目的が食い違っていたあの時間は一体なんだったんですかね、と実働2日で済んだわたしだって思うし、まして「多くの日をも」過ごしてしまったこの名も知れぬ詠者のつらさたるや……と思ってしまった。これは恋歌だ。でも現実のままならなさ、自己肯定感が底をつきそうな人へも届いてほしい歌だと思った。

 まあ、難しい情勢だったとはいえ、そもそもあんまり人から声をかけられることもない人間なので、これからはちょっとずつこっちから声をかけていきたいな、と思っています*3。各位、気軽に乗ったり断ったりしてほしい……連絡先さえ知っていれば、まずこの歌の詠者に声をかけたかったです。水族館行こうぜ、それか漁港とか行ってさ、小さい魚釜揚げにしたやつを食いにいこうよ。

*1:参考:「拾遺和歌集新日本古典文学大系

*2:参考:氷魚(ひうお)|産地レポート

*3:それはそれとして、最近は少しずつ忙しくなりそうな気配がありますが……