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恋のはやさはパワー

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 おもしろかった~。猪*1と猿が友達の、野趣あふれる少女が恋をした!? 走り出したら止まらない爆速ほっこりラブストーリー!という感じでした。見開きとか魚眼構図とか、ちょくちょく絵がめっちゃ楽しいんすよ*2。でもやっぱりおすすめの理由をひとつあげるなら、恋に気づいた女の子が一生懸命自分の恋に邁進していくわんぱくな推進力があまりに魅力的なところ、その「爆速」っぷりだと思います。
 
よしのがはいはなみたかく行く水の
 はやくぞ人を思ひそめてし
紀つらゆき(古今/恋一/471) 

 そういえば今日読んでいた恋の歌の中に「はやく」がキーワードの歌がありました。
 訳すなら「よしのがはいはなみたかく行く水の」吉野川の岩の上を越す波が高くなるくらいに流れる水が「はやくぞ人を思ひそめてし」速いではないが、ずっとはやく(前)からある人のことを想っていたのだ、という感じでしょうか*3
 上三句が「はやい」を導く序詞なのですが、かなりいい味出していて好きです。「ずっと前から想っていた」ということを言葉にして詠むということは、恋が表出した瞬間と捉えることもできるはず。川の中の岩に高い波がかかるということは、水量が豊かで流れが早いということ。上の句で詠まれたその水の量と勢いは、ずっと秘めていた思いを表現するこの歌の土台になっている気がします。

*1:正確には猪と豚を足したみたいな「ブタシシ」という謎の生物。謎の生物が出てくる同じ作者の漫画もジャンププラスから去年の暮れに発表されていました→おわりの森から - つばさんた | 少年ジャンプ+ ドラゴンの表情の野生と感情のかき分けがすごく好きです

*2:作者のデビュー作と思しき「ココロボット - つばさんた / 【特別読み切り】 | マガポケ」この頃からもう既に見開きがめっちゃいい……

*3:参考:「古今和歌集日本古典文学大系