わたいりカウンター

わたいしの時もある

カツオの刺身みたいな濃淡

村雲のしぐれてそむる もみぢ葉は

 うすくこくこそ色も見えけれ

覚延法師(千載/秋下/354)

 

 値引きされていて買ったカツオのさくが、端の薄いところまでついていて、 切ると断面が水滴みたいな形になった*1。 赤身と血合いの赤色も相まって、その断面が幽霊と一緒に出てくる「ひとだま」みたいに見えた。 
 
 秋に降る時雨は、紅葉を色づかせ秋の深まりを告げるものと、紅葉を散らし冬の気配を知らせるものがある。歌は前者を歌ったもの。
 紅葉を染める、と言ってもペイントの塗りつぶしのように一面同じ色というわけにはいかない。色づいた紅葉の赤は濃かったり薄かったりする。歌はその色のむら*2を楽しんでいた。
 現実には季節はまだまだ夏。ひとだまみたいな赤いカツオの刺身を見て、気が早いことにお盆のことを考えたりしていた。食べおわって、赤身と血合いの濃淡が綺麗だったなと思いつつ和歌を眺めていたら、ちょうど紅葉の濃淡を歌っていて秋まで恋しくなってしまった。

*1:貧乏性なので、さくを上手に切った人のおかげでちょっと多く食べられたと思うとうれしい。さくの値段はグラムいくらじゃなくて、ひとついくらだったので。

*2:調べたら斑で「むら」って読むらしいです