わたいりカウンター

わたいしの時もある

いとはれてのみ

雲もなくなぎたるあさの我なれや
 いとはれてのみ世をばへぬらん
きのとものり(古今/恋五/753)

 口を一文字に結んで、目を閉じて、静かに涙を流しているラブコメ漫画のキャラクターの表情を思い起こさせるこの歌。掛詞が痛烈すぎませんか。雲のない穏やかな朝と詠者「我」の共通点は「いと晴れて/厭はれて」いること。ずっと嫌われていたことを知った詠者の嘆息の歌なのですね。
 「いとはれてのみ世をば経ぬらん」を訳すなら、あっけらかんと晴れわたる朝ではないが、ずっと嫌われたままの関係なんだろうなあ、という感じでしょうか*1
 けれど、相手との関係性への絶望とは裏腹に、湿っぽい感じがあまりしない歌なのがすごいところ。「雲もなくなぎたるあさ」「いと晴れてのみ」あたりがその要因なのでしょうか。
 ここからはごく個人的な感想になってしまうのですが、ラブコメ漫画の主人公の恋ではなく、その友人のひと夏の恋みたいな、箸休め回特有のカラッとした失恋の気配をこの歌に感じます。その後主人公の恋を後押ししながら、自分と向き合って、きっと最終的にはテンション感の合う相手が見つかる流れだから、ちゃんとへこんだら次いこ、次!