わたいりカウンター

わたいしの時もある

ぬかるみ

Or, by the moon embittered, scorn alound
In glory of changeless metal
Common bird or petal
And all complexities of mire or blood.
(「ビザンティウム」/ウィリアム・バトラー・イェイツ の一節より)(Byzantium / Willam Butler Yeats

というより、月光を浴びて怒り、大声で嘲笑しているーー
変わらない金属の栄光の中で、
ありきたりな鳥や花弁や、
ぬかるみとか血によるいざこざのことを。

(原文引用、訳参考「イギリス名詩選」平井正穂編)


 Splatoon3発売まで、恐ろしいことにもう2週間もない。先日の体験版で思ったことはたくさんあるけれど、システムや操作感についての話をしてもしょうがない。もっと感覚的なところでおもしろかったのはイカたちの潜るインクがSplatoon2と比べて少し粘り気があるように感じたこと。
 振り返ると相手のインクに足を取られやすかった気がするし、画面に表示されるインクの質感は前作よりもねっとりとした光沢を放っているように見えた。
 手近にあった「イギリス名詩選」をパラパラ読んでいたら、詩の中で繰り返されるmire という語彙が気になった。岩波文庫平井正穂訳では「泥濘」と訳されていて、英英では「deep mud」と説明されている。また「the mire」で「逃れがたいように見える悪い、または困難な状況」のことを指すらしい。
 ビザンティウム全体を通して、冷徹な理想とぐちゃぐちゃした人間の対比が描かれていて読んでてちょっと慌てた。自分が持っているより強烈な悲しみと切望を見たような気がしたからだ。
 言葉にすることで実情がわかることがある。私は「泥濘」という言葉を見た時に真っ先にSplatoon3のインクを思い出したし、待ち焦がれたタイトルの新作にズブズブにのめり込んでしまう自分がこわいと再認識して、くだらないこと*1で悩んでるなと少し冷静になれた。

*1:ちょっと言葉が強すぎる気もする。けれど、存在に絶望し変化を希求する言葉の連なりを読んだら、ゲームにハマるのが怖いという悩みは、とてもちっぽけなことのように思えたのでした。