わたいりカウンター

わたいしの時もある

川岸の石には雪が残ってる

  泉川にして作る歌一首
妹が門入り泉川の常滑
 み雪残れりいまだ冬かも
 (万葉/巻九/雑歌/1695)

 この1週間ほど、自分の心の狭さやら、不安やらに心を奪われがちだったけれど、指定された待機・療養期間を経て、なんとかまた元の日常に戻りつつあります。
 歌を訳すなら「妹が門(かど)入り泉川(いずみがわ)の常滑(とこなめ)に」妹が門を入ったり出づるではないが泉川の常滑には「み雪残れりいまだ冬かも」雪が残っている。まだ冬なのか、という感じでしょうか*1
 「いまだ冬かも」というのは具体的にまだまだ冬真っ盛りなのか、もうすぐ春ではあるのか、どっちなのかなと考えてしまいました。
 「み雪のこれり*2」雪が残っている、という表現をするなら、解けている雪もあるのだと思います。また「入り泉川の」と八字で字余りになっているところから、あふれるばかりに水位が高かったり水の勢いが激しいのかと邪推してしまいます。もしそうなら、雪解け水がそうさせるのだと思いますし、やはり春の手前の歌なのではと思います。
 常滑とは、川岸のすべすべした丸い石のことです。それと残雪の少し硬いザクザクした質感が取り合わせとしてたのしい気がしました。
 ですが、春が近いとはいえ、まだ春じゃないし、川岸の石は雪が残ってますます滑りやすい。楽しいことを見つけつつも、気を抜かずに収束まで見届けたいです。皆さんもどうかご自愛ください。

*1:参考:「萬葉集 2」日本古典文学全集

*2:全く余談ですが、単に変換すると「御幸のこれ理解」と出て笑ってしまいました。御幸の歌ではないと否定することもできないけども