わたいりカウンター

わたいしの時もある

減ったり増えたり

梅のかのふりをける雪にまがひせば
たれかことごとわきておらまし
(古今/冬/きのつらゆき/336)

 最近は病み上がりなりに忙しく「このぐらい体力がないと困るんだったな」と、思い出したりできたのは良かったけれどちょっと疲れた。けれど多分今日で忙しさもひと段落ついたと思われ、ほっと一息と思ったところ、トルコの地震の報道を見た。不安やつらさ、無力感といったのっぺりとした灰色のスライムみたいな感情で心がいっぱいになっていくのを感じた。

 視界一面の白さを歌う冒頭歌。訳すなら「梅のかのふりをける雪にまがひせば」梅の香りが、降りつもる雪に紛れてしまっていて「たれかことごとわきておらまし」誰だったら「これは梅」「これは雪」と判別して(枝を)折っていく(手土産にする)ことができるでしょうか、という感じか*1。素直に降雪が呼んだ銀世界を言祝ぐのではなく、「誰も梅か雪かわかんないんだけど!」と、困ってるような怒ってるようなそれでいてちょっと照れてるような感じで雪景色を描いているのが、なんだか面白くてなごんだ。自然の美しさに酔いしれるような歌は、ちょっと今はいいかなという感じだったから、こういう歌、助かる。

 今日抱えた感情は色々あって、それを無理に処理しようとすると、いくら時間と気力があっても足りないかもしれない。それに、たくさん感情を抱えるとわたしはちょっとパニクってしまうらしい。この歌を読んで、貫之でさえわからないのなら、雪か梅かわかるのは、春になって雪が溶けてからだろうと思った。すぐにどうにかなるものでもないし*2、いつまでにとか考えずに、自分の感情を毎日ちょっとずつ腑分け出来たらいいな。

*1:参考:「古今和歌集日本古典文学大系

*2:いつかどうにかなる、というものでもないかもしれないけど、だったらなおさら