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泊瀬川白木綿花(しらゆうはな)に落ち激(たぎ)つ
瀬をさやけみと見に来し我を
(万葉/巻七/雑歌/河を詠む/1107)

 

 「白木綿花」というモチーフのよさが炸裂している歌を見つけたので紹介したい。

 「泊瀬川白木綿花(しらゆうはな)に落ち激(たぎ)つ」泊瀬川(の流れ)の白い木綿の花のように激しく注いでいる「瀬をさやけみと見に来し我を」瀬がすがすがしいので見に来たわたしだよ、という感じ*1。まず「白木綿花」と白く広がっているモチーフを無音の静止画で見せてくる。これをぼーっと見てると「落ち激つ」と激流の水飛沫の音と冷たさで、平手打ちでも食らったみたいに一気に目の前の景に引き戻される。

 「さやけみ」の「み」は理由を表す表現で、詠者がある程度この景色を想像して期待していたことがわかる。でも想像と実際は情報の量が違う*2。この歌では「白木綿花」と「落ち激つ瀬」のギャップはそのまま、想像と実際の景の情報量のギャップでもあるように思わせてくれるところがたのしい。

*1:参考:「萬葉集 2」日本古典文学全集
    「現代語訳対照 万葉集(中)」旺文社文庫
    結句の「を」が気になったので二冊確認しました。詠嘆っぽい

*2:このあいだ久々に劇場に行ってコナンの映画を観ました。満足。あほほどブラッシュアップされた上で劇場の画質音質で見る、いつもの工藤新一の来歴が贅沢すぎてにこにこしちゃいました。あとサビのシーンの舞台設定と心情描写のかみ合いがやばすぎて、大量の上質な短歌を直接脳に注ぎ込まれてるみたいだった。映像と音ってすごいですね