わたいりカウンター

わたいしの時もある

20230427まで

 安くて重宝していたスーパーで買ったキャベツが、テープを剥がして外の葉を剥くと悲しい感じになっていた。怒り……は不思議と湧かず、気づけたのかなという自分への悔いとか、そこそこ安く提供するためにはこういうことも起きてしまうんだろうか、と現状をやわらかく受け止めるために思考のリソースを使っていた。

 最近、普段来ない場所でひとりご飯を食べる機会が2回あり、たくさん歩いた。以前バーテンの先輩に教わった方法で、そこそこ飲食店のある通りを見つけたら端から端まで往復する。で、その中でいくつか目星つけて体調とかお店の感じとかでひとつに絞って、えいやっと入る。ふたつのお店ともおいしい思いをさせてくれた。

 定食屋さんはカウンターのお店もいい。お盆の上にたくさん小鉢が乗っていくのを見るのがたのしい。最後に湯気が上がる味噌汁がのってご飯が乗って、差し出されたお盆を受け取る。小さな小鉢に黒くて四角いものが入っていた。店主がその小鉢を手のひらで示した。「これは甘いやつで水羊羹ですからさい「最後にたべる!」……店主の親戚の孫か何かかわたしは? いや違うんですよ、水羊羹であることに驚いて、解説してくれる優しさに沁みつつも会話の流れにピンときて、わかってますともって見栄を切ろうとしたけど思考が渋滞して敬語落っことしちゃってこういうことになっただけですから!誰にでもあるでしょ!おばちゃんも笑ってくれたからセーフってことで!何卒!

 

 夜ごはん食べるときに、久々に家でお酒を飲んだ。去年ドラックストアで安売りしてるのを買った「あかし」というウィスキーを水割りにした。氷を入れて、お酒を注いで、水道水を勢いよく注いだ。こぼれはしなかったけれど、細かな気泡が液体の中にたくさんできた。水とアルコールが混ざって、氷と常温の水道水で対流が起こって、その気泡がゆらゆら流れているのを、誰にも見られてないからってじっと見つめてしまった。

 夜に友達から連絡があって、「ワールドトリガーの11巻を持っているか」ときた。わたしはその漫画が好きだから本棚に最新25巻まで揃っていた。今度持っていこうか?と返事をした。友達は以前わたしがちまちま貸してくれたものを返し忘れたかもしれないから教えてくれただけだった。手元には1刷りの11巻があった。それはわたしのじゃないよと返した。それはわたしの好きなマンガだよ、とは伝えなかった。友達も、そのことはもう知っているから。