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わたいしの時もある

夏ごもり

雪ふれば冬ごもりせる草も木も
春にしられぬ花ぞさきける
(古今/冬/323/紀貫之

 この8月は停滞していた。仕事はやんわりシフトがなくなり、歌会も休みで外出の頻度も少なく、これという思い出は……そう、人生二度目の盆踊りへひとりで参加、見知らぬおばさまに褒められた後2時間踊り続け、八木節などいくつかの盆踊りをマスターしたことぐらいだと思う。

 冒頭歌は冬に草木に積もる雪を詠んでいる。訳すなら「雪ふれば冬ごもりせる草も木も」雪が降ると冬ごもりし(植物としての営みを潜め)てしまう草も木も「春にしられぬ花ぞさきける」春には知られない花を咲かせているなあ、という感じか*1

 春という草木が芽吹く明るい季節にはわかんないかもしれないけど、冬には冬のいいところがあるのだ、という内向きな賞賛が沁みた。あるいは詠者は、人と会う機会の減る冬に気が滅入っていて、春に向かって虚勢を張る必要があったのかもしれない。季節こそ夏ではあったが、わたしも停滞気味の日々にあって「でも盆踊り覚えたもんね! 褒められたし!」と社会へよくわからない胸の張り方をしつつ、また書いたりしていこうと思う。