わたいりカウンター

わたいしの時もある

2021-01-01から1年間の記事一覧

あられが降っているとどうなる?

題知らずかきくらし霰降りしけ白玉を 敷ける庭とも人の見るべき (後撰/冬/464) 視界を埋め尽くすくらい霰よ降りしきってくれ、白くて丸い石が一面に敷いてある庭かと人が見るほどに、というような意味になるだろうか。 この歌、最初に読んだ時は自分の貧乏性…

歳をとっても

ももしきや古き軒端のしのぶにも なほあまりある昔なりけり 順徳院 (百人一首/100) 適当に作るインスタントラーメンは、ほどほどに貧しき生活を送る人間にとっての贅沢品ではないか。 最近インスタントラーメンに炒め物を乗っけて食べることが楽しくて、一週…

洗濯物は干せずとも

はなはだも降らぬ雪ゆえこちたくも 天つみ空は曇りあいつつ (万葉/巻十/2322) 今干しても雨に降られそうだから。そう思って洗濯物を干さずにいたことがある。たぶん多くの人があるだろう。だからこういう時に何があるかはご存知の通りである。気を利かせた時…

同僚と働いてもひとり

世とともにあぶくま河の遠ければ そこなる影を見ぬぞわびしき (後撰/恋一/520) コンビニで働いていた期間が5年ほどある。お世話になっていた店舗には外国人アルバイトが多く、一緒にシフトに入った日本人は店長くらいだった。中央アジアやベトナム、中国、ミ…

 朝の音

遥かに江を泝(さかのぼ)る船人の歌を聞く歌一首 朝床に聞けば遥けし射水(いずみ)川 朝漕ぎしつつ歌う船人(万葉/巻十九/4150) 母方の祖母の家に行く度に、耳がツーンとした。玄関を開けると漂ってくる、木と畳とタバコと油絵の具とコーヒーとカレーと、そうい…

「音のソノリティ」①ー2015年上半期編

音のソノリティという番組がある。6分の放送時間の中で、日本各地で採取した音を聞かせる番組である。 音の傾向はさまざまで、蛙や鳥の鳴き声や、伝統的な祭りの空気感、職人芸に付随する効果音や、農水産物の収穫作業など多岐に渡る。 なかなかニッチ番組だ…

食べられなかったマグロのタタキ丼の行方

百首歌たてまつりし時 二條院讃岐散りかかる紅葉の色はふかけれど 渡ればにごる山川の水 (新古今/秋下/540) この間病人にご飯を作る機会があったのだが、作れと言われて作ったのに食欲がないからいらないと言われた。自分でも狭量だと思うがちょっと不満を感…

花も紅葉も枝になき頃

降る雪は消えでもしばしとまらなん 花も紅葉も枝になき頃 (後撰/冬/493) ふと、私はどう生きてどう死ぬのだろうと思うことがある。結構後ろ向きな気持ちで。 そんな時、それをしなくても死なないけど最大ヒットポイントがジリジリ減っていくタイプの外出を全…

あをによし

大宰少弐小野老朝臣の歌一首 あをによし奈良の都は咲く花の 薫ふがごとくいま盛りなり (万葉/巻三/328)news.yahoo.co.jp 近鉄の観光列車の名前が「あをによし」になるとのこと。奈良を導く枕詞が列車の名前になるのは、列車が他府からくる観光客の最初に触れ…

電話越しに

題知らず あはれてふ事にぞうたて世中を 思ひはなれぬほだしなりけれ (古今/雑下/939) 往々にして、子供というのは説明書を読まないのではないか。買ってもらったゲームを矢も盾もたまらずすぐプレイしていた子供時代だった。 けれど、一度だけその説明書…

「うぐいすと同じものを見る」を見る

suihanki660.hatenablog.com 昨日の書いたものを読み返していたら、ツッコミどころがたくさんあって頭を抱えた。黒歴史ってこうやって作られていくのだと納得がいった。同時に私は和歌をなぜ読んでいるのか、という難しい問いに対する答えに少しだけ近づけて…

うぐいすと同じものを見る

題知らず 詠み人知らず うぐいすの鳴く野辺ごとに来てみれば 移ろふ花に風ぞ吹きける (古今/春下/105) うぐいすが鳴いている野辺に来てみたら、散っている花に風が吹いていた、という意味になるだろうか。 状況としてはシンプルな歌だが、解釈が少し難しい。…

短所と長所と

はつかりをよめる 在原元方 まつ人にあらぬものから初雁の 今朝なく声のめづらしきかな (古今/秋上/206) 今日はやらないといけないことをやったのだけれど、後回しにできることはすべて後でやる、という自分の悪いところを大変後悔することになる日だった。 …

冬の歌を背中に注ぐ

ふる雪はかつぞけぬらし あしびきの山のたぎつ瀬音まさるなり (古今/冬/319) 今日は働いたけど、やるべきことを棚に上げて生活が変わるなぁとぼんやり過ごしてしまった時間も長かった。そんな丸まった背中に冷水を注ぐべく、古今集の冬の部を読んでいた。 と…

物語と生活

秋の田の刈穂の庵の苫を荒み 我が衣手は露に濡れつつ (百人一首1/天智天皇) 中学生の頃からみみっちい節約をしてはほしい本を買っていた。 毎週土曜日はお昼代として500円をもらっていたのだが、学食では小ライス100円だけ買って、お茶を入れるコップに友達…

900年くらい前のラブソング

瀬を早み岩にせかるる滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ (百人一首77/崇徳院) 自分の頑なに変化を恐れてしまう部分がとても怖い。 何かを始めるときも、普段となにか違うことを少しでも感知すると心のシャッターが閉まりそうになる。本日閉店。 そんなこと…

「しまひと」とギザ十

鹿の子まだら suihanki660.hatenablog.com 先日海に鹿が現れて鳴いている歌を見つけて考えていたけれど、源重之の歌集に海と鹿の取り合わせが歌われているものを見つけたのでそれについて調べたことなどを書いていきたい。 見よや人 志賀の島にと 急げども …

「まかす」の意味・文字起こしについてのエッセイについて

正しいって思い込んでいたことが、考えたり試みていくうちにそうでもないと気づいたりする。そのたびに性格が慎重に臆病になっていく気がする。 「まかす」ってなに? けふきけば 井手の蛙も すだくなり 苗代水を 誰まかすらむ (重之百首・春) 井手(いで): …

親子の会話いろいろ

「浅草詣」伊藤左千夫 青空文庫を急に読みたくなってビュワーアプリを落として、短い文章を探した。新村出のキセルの語源に関する文章*1も研究史を概観していてよかったが、会話の形式として目を見張ったのは伊藤左千夫の「浅草詣」だった。晴れたら浅草に連…

シェルターみたいな実況動画

ご飯を食べるときに見る映像が、テレビから動画サイトになって久しい。友達と気軽にゲームできるわけもなく、というかそもそも友達がそんなにいないというのもあって、ゲームの実況動画を憧憬やシンパシーを感じながらよく見る。今回はそんな動画の中から二…

鹿は海で鳴くのか

羈旅(たび)の歌 名児の海を 朝漕ぎ来れば 海中(わたなか)に 鹿子(かこ)そ鳴くなる あはれその鹿子 (万葉集巻七1417) 名児の海を 朝漕いできたら 海の中に 鹿の子が鳴いている かわいいんだ、その鹿の子 (参考:日本古典文学全集『萬葉集』/小学館) 万葉集を読…

ほのぼのと

ギターのひずんだ音に、やり場のない焦がれるような熱量を感じる。希望が輝いて見えるのは、自分の周りが暗いからだろう。 では自分の周りが明るいときはどうか。 そういえば昔の歌に、もっとふんわりした明るさに満ちた歌があった。 ほのぼのと 明石の浜の …

ゆきつもる

母方の祖父は私が生まれる前に亡くなっていて、父方の祖父も私が小学生の頃に亡くなってしまった。買ってもらったおもちゃのことは思い出せるのに、おじいちゃんとの記憶はあんまり思い出せなくてなんだか申し訳ないと思う。 源重之(しげゆき)という人物とそ…

『淡島百景』のこと

紙パックの飲み物をビニール袋に入れたままストローをさして飲むことが、めちゃめちゃかっこいいことだと思っていた時期がある。中でもレモンティーが好きで1リットルパックをよく飲んでいた。けれど、それを続けて2本飲んで気分が悪くなったことがあって…

カレーうどんの日

2日目にしてウィキペディアの今日は何の日を見ていた。 カレーうどんの日(日本の旗 日本) 1910年(明治43年)に東京目黒の蕎麦屋「朝松庵」が提供し、全国にカレーうどんが浸透してから100年目になる2010年、カレーうどん100年革新プロジェクトが制定。6月…

あしびきの

百人一首の3番を嫌いになったり好きになったりしている。 あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む という歌があって、小学生の頃はなんとなくゴロが良くて嫌いじゃなかった。百人一首を暗唱する授業があって、必要に迫られてその時だけ…