わたいりカウンター

わたいしの時もある

用意された心

風寒み春や来たらぬと思ふ間に山の桜を雪かとぞ見る(重之集/80) この間ハイキューという漫画の公式ガイドブック*1を読んでいたら、作中のフレーズが細菌学者パスツールのスピーチの言葉だったと知りました。調べるとウィキペディアにも「幸運は用意された…

水茎の跡

水茎の跡ふみつけて試みむ思ふところに歩みつくやと (重之集/64) 初読で感じた感情は哀愁でした。重之は相模やら陸奥やら地方へ行き仕事をしていた。要は出張の多い人物だったのですね。そんな重之が水草の茎を「ふみ」踏みしめて、思ったところに足跡を残…

紅葉の代わりに

もみじ葉を寄する網代はおほかれど秋を留めて見るよしぞなき (重之集/35) ペットボトルにときめいたいた時期があります。小学生くらいの時です。本で*1ペットボトルの底に小さな穴を開けてから半分に切って、飲み口を底に向けて嵌め込むと、川に沈めて魚が…

バイク屋の白いライト

初霜の置かぬだに濃きもみじ葉のそのさかりをば誰に見せまし (重之集/24) 昨日今日と外出をしていたのだが、乗り物代をけちって徒歩やら自転車やらを使っていた。そのため太ももが筋肉痛の気配を見せていて、こわくなって帰りがけにサバスを買った。 夜、…

道路に敷いてあるブルーシート

明日よりは若菜摘まむと標めし野に 昨日も今日も雪は降りつつ(万葉/巻八/山部赤人/1427) 乗り物代をケチって大通り沿いを歩いていると、車道の片側一車線が封鎖されていました。 見るとこれから工事が始まるという雰囲気で、メトロノームのように赤く光る棒…

くりかえし

暁の別の道を思はずは 暮れ行空はうれしからまし (拾遺/恋二/726) Splatoonに生活を破壊された、というよりも私がSplatoonで生活を破壊したんだよなと思うわけです。これは懺悔です。悪いのはゲームじゃなくて私なのだ。 更新が滞っている間に、漫画を紹介…

春のイメージ

とふひともなきやどなれどくるはるは やへむぐらにもさはらざりけりつらゆき(新勅撰/春/7) 人の来ない家にも、やってきてくれる春は幾重にも重なった葎をーー、なんでしょう。最後の「さはらざりけり」がすぐに意味を取れませんでした。 最初は、話題に触…

恋のはやさはパワー

shonenjumpplus.com おもしろかった~。猪*1と猿が友達の、野趣あふれる少女が恋をした!? 走り出したら止まらない爆速ほっこりラブストーリー!という感じでした。見開きとか魚眼構図とか、ちょくちょく絵がめっちゃ楽しいんすよ*2。でもやっぱりおすすめ…

二回確認するという自分語り

風をだに恋ふるはともし風をだに 来むとし待たば何か嘆かむ(万葉/巻八/秋の相聞/鏡王女/1607) 男子校の将棋部員だった頃、大会では相手が共学校ってだけで並々ならぬ闘志を燃やしていました。 歌を訳すなら「風をだに恋ふるはともし風をだに」風さえもね、…

日の目をみないと思ってた

出づる日の同じ光に四方の海の 浪にもけふや春は立つらむ(拾遺愚草上/初学百首/春二十首/1首目) 今日は、本当におそるおそる、誘われていた歌会を見学していました。そしたら、びっくりするくらい話をわかってくれる人がいてとても楽しかった。例えば、詞書…

求めれば

海の底沖漕ぐ船を辺に寄せぬ 風も吹かぬか波立たずして (万葉/巻七/雑歌/1223) 訳すなら「海(わた)の底沖漕ぐ船を辺(へ)に寄せぬ」沖に出て行った船が、岸に寄せてくれるような「風も吹かぬか波立たずして」風が吹かないだろうか、波は立たないで、という…

泣いて惚気を聞く

おもひかけたる人、寝たるを見てうき事に夢のみさむるよの中に うらやましくも寝られたるかな (実方集/152) 楽しみにしているものの発売日の前日なんかは、わくわくして眠れないということがありますね。けれど、それで眠れない夜を過ごすくらいなら、その…

心の色は

かつ濯ぐ澤の小芹の根を白み 清げにものを思わずもがな (山家集/下雑/1344) あらゐけいいちの漫画でピンクをいちごみるく色と形容する回がありました。 歌を意訳すなら「かつ濯ぐ澤の小芹の根を白み」澤でそのまますすいだ小ぶりな芹の根が白いみたいに「…

もみじの錦

このたびはぬさもとりあえずたむけ山 紅葉の錦 神のまにまにすがはらの朝臣(古今/羈旅/420) 私がSplatoon2を始めて今日で4年半ほど経ち、プレイ時間は2000時間に届こうというところ、ようやく念願だった全ルールXを達成できました*1。新作発売を今週末に控え…

宿題後回し癖

世の中を何に喩へむ朝開き 漕ぎ去にし舟の跡なきごとし (万葉/巻三/雑歌/沙弥満誓/351) 八月末に買い出しに行った時のことだ。スーパーの清涼飲料水エリアからエナジードリンクがごっそりなくなっていた。夏休みの宿題の追い込みにと求められたのだろうか…

川岸の石には雪が残ってる

泉川にして作る歌一首妹が門入り泉川の常滑に み雪残れりいまだ冬かも (万葉/巻九/雑歌/1695) この1週間ほど、自分の心の狭さやら、不安やらに心を奪われがちだったけれど、指定された待機・療養期間を経て、なんとかまた元の日常に戻りつつあります。 歌…

濃い影から

延喜御時、御屏風に夏山の影をしげみやたまほこの 道行人も立ち止まるらん貫之(拾遺/夏/130) 最近は、日が暮れればもう秋のような涼しい風が吹きますね。涼しくなってようやく、夏のいいところを考えるだけの余裕が出てきました。 冬にこたつにこもってア…

鶴に心をみる

松が崎千とせふる松が崎には群れゐつつ 鶴さへあそぶ心あるらし清原元輔(拾遺/神楽歌*1/607) 昨日、春の花を一緒に楽しんでくれない雁の歌のことを考えていたからか、この歌が目にとまりました。 例えば花札で描かれるように、鶴と松がめでたいものだとさ…

雁生の半分

歸鴈をよめるはるがすみたつをみすててゆくかりは 花なき里にすみやならへる伊勢(古今/春上/30) 「人生の半分損してるよ」というフレーズがありますね。誰かにコンテンツを勧めるときに用いられるこのフレーズを、私は複雑に思っています。意地悪に言葉尻…

ぬかるみ

Or, by the moon embittered, scorn aloundIn glory of changeless metalCommon bird or petalAnd all complexities of mire or blood.(「ビザンティウム」/ウィリアム・バトラー・イェイツ の一節より)(Byzantium / Willam Butler Yeats) というより、…

青信号は?

水鳥の鴨の羽色の春山の おほつかなくも思ほゆるかも (万葉/巻八/春の相聞/1451)(詞書に「笠女郎、大伴家持に贈る歌一首」) 最近「怪奇!YesどんぐりRPG」というトリオの動画を楽しみにしている。チャンネルではいわゆる賞レースに臨むライブの動画*1も…

音が教えてくれる

ねやの上にかたえさしおほひ そともなる 葉ひろ柏に霰降るなり能因法師(新古今/冬/655) 家でエナジードリンクをたまに飲む。味は好きだけれど、毎日のむとだんだんおいしく感じなくなるから不思議だ。頭で好きと思っていても、内臓の方はエナジードリンク…

晴れてはないけど

はれやらぬみ山の霧のたえだえに ほのかに鹿の聲聞ゆなり (山家集/上秋/300) 昨日すごい決意を固めていた風だったけれど、今日は日がなSplatoon3の体験版をプレイしていた。あんまり外に出られないし、しょうがないけれど、体験版の12時間の制限時間のうち…

滝はずっと流れている

くる人もなき奥山の滝の糸は 水のわくにぞまかせたりける中納言定頼(後拾遺/雑四/1055) 隣の部屋から咳をする音が聞こえる。しばらく外出してはいけない、ということになってしまった。そのせいか、今日一日ふわふわしてやることが手に付かなかった。 歌は…

沈みこむような閉塞感

わたつみとあれにしとこを今さらに はらはば袖やあわとうきなん伊勢(古今/恋四/733) 8月も残りわずか。そういえばもう何年もプールに入っていないことに気づきました。 歌を訳すなら「わたつみとあれにしとこを今さらに」(涙で)大荒れの海みたいになって…

朝戸を開ける理由

言繁み君は来まさずほととぎす 汝だに来鳴け 朝戸開かむ (万葉/巻八/夏の相聞/1499) 末句「朝戸開かむ」の爽やかさが目に止まったのですが、読んでいくうちに「朝戸」開けちゃダメなのでは?と心配になりました。というか、爽やかどころの話じゃないみたい…

船の梶の柄になりたい時

たまきはる命に向かひ恋ひむゆは 君がみ舟の梶柄にもが (万葉/入唐使/巻八/春の相聞/1455) 週末までに恋の歌を集めないといけないので、万葉集の相聞の歌を読んでいました。 冒頭歌は遣唐使ではなればなれになってしまう時に相手に寄り添った歌で、「仕事…

いとはれてのみ

雲もなくなぎたるあさの我なれや いとはれてのみ世をばへぬらんきのとものり(古今/恋五/753) 口を一文字に結んで、目を閉じて、静かに涙を流しているラブコメ漫画のキャラクターの表情を思い起こさせるこの歌。掛詞が痛烈すぎませんか。雲のない穏やかな朝…

寝られないというより寝ない夜

寝ぬ夜こそ数つもりぬれほととぎす 聞くほどもなきひと声により小弁(後拾遺/夏/191) 今日は「21世紀東欧SF•ファンタスチカ傑作選 時間はだれも待ってくれない」高野史緒•編を読み始めた。とりあえず冒頭の二編を読んだところどちらもおもしろかった。 宇宙…

楽しみを目の前に

十月許に、初瀬に参りて侍りけるに、あか月に霧の立ちたるをよみ侍りける行く道の紅葉の色も見るべきを 霧とともにやいそぎたつべき前大納言公任(後拾遺/羈旅/501) 見たかった紅葉が霧で見えないのに、もう出発しないと駄目? と旅先での霧に渋い顔をして…