わたいりカウンター

わたいしの時もある

2022-01-01から1年間の記事一覧

泣いて惚気を聞く

おもひかけたる人、寝たるを見てうき事に夢のみさむるよの中に うらやましくも寝られたるかな (実方集/152) 楽しみにしているものの発売日の前日なんかは、わくわくして眠れないということがありますね。けれど、それで眠れない夜を過ごすくらいなら、その…

心の色は

かつ濯ぐ澤の小芹の根を白み 清げにものを思わずもがな (山家集/下雑/1344) あらゐけいいちの漫画でピンクをいちごみるく色と形容する回がありました。 歌を意訳すなら「かつ濯ぐ澤の小芹の根を白み」澤でそのまますすいだ小ぶりな芹の根が白いみたいに「…

もみじの錦

このたびはぬさもとりあえずたむけ山 紅葉の錦 神のまにまにすがはらの朝臣(古今/羈旅/420) 私がSplatoon2を始めて今日で4年半ほど経ち、プレイ時間は2000時間に届こうというところ、ようやく念願だった全ルールXを達成できました*1。新作発売を今週末に控え…

宿題後回し癖

世の中を何に喩へむ朝開き 漕ぎ去にし舟の跡なきごとし (万葉/巻三/雑歌/沙弥満誓/351) 八月末に買い出しに行った時のことだ。スーパーの清涼飲料水エリアからエナジードリンクがごっそりなくなっていた。夏休みの宿題の追い込みにと求められたのだろうか…

川岸の石には雪が残ってる

泉川にして作る歌一首妹が門入り泉川の常滑に み雪残れりいまだ冬かも (万葉/巻九/雑歌/1695) この1週間ほど、自分の心の狭さやら、不安やらに心を奪われがちだったけれど、指定された待機・療養期間を経て、なんとかまた元の日常に戻りつつあります。 歌…

濃い影から

延喜御時、御屏風に夏山の影をしげみやたまほこの 道行人も立ち止まるらん貫之(拾遺/夏/130) 最近は、日が暮れればもう秋のような涼しい風が吹きますね。涼しくなってようやく、夏のいいところを考えるだけの余裕が出てきました。 冬にこたつにこもってア…

鶴に心をみる

松が崎千とせふる松が崎には群れゐつつ 鶴さへあそぶ心あるらし清原元輔(拾遺/神楽歌*1/607) 昨日、春の花を一緒に楽しんでくれない雁の歌のことを考えていたからか、この歌が目にとまりました。 例えば花札で描かれるように、鶴と松がめでたいものだとさ…

雁生の半分

歸鴈をよめるはるがすみたつをみすててゆくかりは 花なき里にすみやならへる伊勢(古今/春上/30) 「人生の半分損してるよ」というフレーズがありますね。誰かにコンテンツを勧めるときに用いられるこのフレーズを、私は複雑に思っています。意地悪に言葉尻…

ぬかるみ

Or, by the moon embittered, scorn aloundIn glory of changeless metalCommon bird or petalAnd all complexities of mire or blood.(「ビザンティウム」/ウィリアム・バトラー・イェイツ の一節より)(Byzantium / Willam Butler Yeats) というより、…

青信号は?

水鳥の鴨の羽色の春山の おほつかなくも思ほゆるかも (万葉/巻八/春の相聞/1451)(詞書に「笠女郎、大伴家持に贈る歌一首」) 最近「怪奇!YesどんぐりRPG」というトリオの動画を楽しみにしている。チャンネルではいわゆる賞レースに臨むライブの動画*1も…

音が教えてくれる

ねやの上にかたえさしおほひ そともなる 葉ひろ柏に霰降るなり能因法師(新古今/冬/655) 家でエナジードリンクをたまに飲む。味は好きだけれど、毎日のむとだんだんおいしく感じなくなるから不思議だ。頭で好きと思っていても、内臓の方はエナジードリンク…

晴れてはないけど

はれやらぬみ山の霧のたえだえに ほのかに鹿の聲聞ゆなり (山家集/上秋/300) 昨日すごい決意を固めていた風だったけれど、今日は日がなSplatoon3の体験版をプレイしていた。あんまり外に出られないし、しょうがないけれど、体験版の12時間の制限時間のうち…

滝はずっと流れている

くる人もなき奥山の滝の糸は 水のわくにぞまかせたりける中納言定頼(後拾遺/雑四/1055) 隣の部屋から咳をする音が聞こえる。しばらく外出してはいけない、ということになってしまった。そのせいか、今日一日ふわふわしてやることが手に付かなかった。 歌は…

沈みこむような閉塞感

わたつみとあれにしとこを今さらに はらはば袖やあわとうきなん伊勢(古今/恋四/733) 8月も残りわずか。そういえばもう何年もプールに入っていないことに気づきました。 歌を訳すなら「わたつみとあれにしとこを今さらに」(涙で)大荒れの海みたいになって…

朝戸を開ける理由

言繁み君は来まさずほととぎす 汝だに来鳴け 朝戸開かむ (万葉/巻八/夏の相聞/1499) 末句「朝戸開かむ」の爽やかさが目に止まったのですが、読んでいくうちに「朝戸」開けちゃダメなのでは?と心配になりました。というか、爽やかどころの話じゃないみたい…

船の梶の柄になりたい時

たまきはる命に向かひ恋ひむゆは 君がみ舟の梶柄にもが (万葉/入唐使/巻八/春の相聞/1455) 週末までに恋の歌を集めないといけないので、万葉集の相聞の歌を読んでいました。 冒頭歌は遣唐使ではなればなれになってしまう時に相手に寄り添った歌で、「仕事…

いとはれてのみ

雲もなくなぎたるあさの我なれや いとはれてのみ世をばへぬらんきのとものり(古今/恋五/753) 口を一文字に結んで、目を閉じて、静かに涙を流しているラブコメ漫画のキャラクターの表情を思い起こさせるこの歌。掛詞が痛烈すぎませんか。雲のない穏やかな朝…

寝られないというより寝ない夜

寝ぬ夜こそ数つもりぬれほととぎす 聞くほどもなきひと声により小弁(後拾遺/夏/191) 今日は「21世紀東欧SF•ファンタスチカ傑作選 時間はだれも待ってくれない」高野史緒•編を読み始めた。とりあえず冒頭の二編を読んだところどちらもおもしろかった。 宇宙…

楽しみを目の前に

十月許に、初瀬に参りて侍りけるに、あか月に霧の立ちたるをよみ侍りける行く道の紅葉の色も見るべきを 霧とともにやいそぎたつべき前大納言公任(後拾遺/羈旅/501) 見たかった紅葉が霧で見えないのに、もう出発しないと駄目? と旅先での霧に渋い顔をして…

波をかぶったような

伏越ゆ行かましものをまもらふに うち濡らさえぬ波数まずして (万葉/巻七/譬喩歌/1387) 訳してみても結構意味がわからないのだけれど、だからかついつい気になってしまった歌。訳は「伏越ゆ行かましものをまもらふに」伏越から 行けばよかったのに 様子を…

ほのかでもスポットライト

鶉伏す刈田のひつぢおひ出でて ほのかに照らす三日月の影 (山家集/中雑/945) 「ひつぢ」とは刈ったあとの株にまた生えてくる稲のこと。それが「おひ出でて」生えてきているのを、やさしい光量の三日月が照らす、という歌*1。ほのかであっても月に照らされ…

いつも窓の外の

大宮の内まで聞こゆ網引きすと 網子ととのふる 海人の呼び声(万葉/巻三/長忌寸奥麻呂/238) 囲碁将棋部に所属していたせいか、放課後、校庭から聞こえる運動部の声を教室から聞くことが多かった。 歌は、宮殿の中にまで、網を引くかけ声が聞こえると歌って…

花のかげ2首

今日暮れて明日とだになき春なれば 立たまく惜しき花のかげかはみつね(躬恒集/388) 源氏物語の藤裏葉を読んで「花のかげ」という言葉が気になったので調べていました。 春が過ぎるのを惜しんで、美しい景色の中で動きたくなくなってしまう歌が2首ありまし…

ほととぎすとスマホ

あしひきの山郭公わがごとや 君にこひつつ いねがてにする (古今/恋一/499) スマートフォンに来る返信を待ち遠しく思っている時、ついつい布団の中でホーム画面を何度も確認してしまうことがある。 「いねがてにする」とは寝かねている、眠れずにいるとい…

こわいかお

この動画を見て、画面の前でニコニコしてしまった。ポケモンバトルをご覧になる方はぜひ見てほしい。 例えば伝説のポケモン、ミュウツーのC(とくこう)の種族値は154だ。なのでC100というのは、そこそこやれるくらいの強みでしかないのだが、動画では普段使わ…

暗いだけじゃなくて

ぬばたまのその夜の月夜今日までに 我は忘れず間なくし思えば (万葉/巻四/702)(「河内百枝娘子、大伴宿禰家持に贈る歌二首」のうちの一首です) スマホやモニターの画面は電源がオフになっている時まっくろになりますね。それが明るい周囲や自分の顔を写…

満ちてしまう感情

蘆辺より満ち来る潮のいやましに 思へか君が忘れかねつる (万葉/巻四/617) 今日の夜はスーパーで売っていた串カツを食べました。さらさらしたウスターソースをできるだけ細く、それでいて途切れないように串カツにかけた時のことです*1。かけられたウスタ…

谷に掛かるかずらみたいに

谷狭み峰に延いたる玉葛 絶えむの心わが思はなくに (万葉/巻十四/3507) 歌の核としては「ずっとあなたのことを思っているよ」というよくあるものだけど、表現が独特です。 訳すなら「谷狭み峰に延(は)いたる玉葛」谷が狭いので嶺にまで(蔓を)伸ばしている…

人の知るべくってなにさ!(万葉集の「片糸」歌2/2)

片糸もち貫きたる玉の緒を弱み 乱れやしなむ人の知るべく (万葉/巻十一/2791)*1 片糸、やっぱり気になるんですよね。 手元にあるものでできるだけ調べたところ、万葉集で片糸が詠まれたのは昨日の歌と冒頭の歌だけらしい。用例が少ないので、片糸とはこれ…

「片糸」は片思いか両思いか

糸に寄す河内女の手染の糸を繰り返し 片糸にあれど絶えむと思へや (万葉/巻七/1316) 冒頭歌を読んで、「片糸」という言葉がどんな状況や思いを背負っていたのか考えてみたくなりました。 まず「繰り返す」は何度も巻つける動作を示すそうです。現在使われ…